フランスが米英豪の新同盟AUKUS発足に激怒した背景2021年09月26日
FRIDAYデジタルhttps://friday.kodansha.co.jp/article/206926≪潜水艦の開発をめぐってフランスが激怒。バイデン大統領が謝ると言う事態があった。背景には対中国包囲網に関する「あらたな動き」が…軍事ジャーナリスト黒井文太郎が解説する≫
9月22日(米国時間)、アメリカのバイデン大統領とフランスのマクロン大統領が急遽、電話会談を行った。これはバイデン大統領がもちかけ、マクロン大統領が応じたものだ。
この会談でバイデン大統領は事実上の「謝罪」をした。
問題の発端は、9月15日に米英豪が他の同盟国にまったく事前連絡もせずに、新たな安全保障の枠組みである「AUKUS」(読み方はオーカス)の発足を発表したこと。
さらにオーストラリアが、フランス企業と進めていた潜水艦開発・建造の契約を一方的に破棄し、米英の協力で新たな潜水艦開発を目指すと決定したことだった。これにフランスは激怒し、駐米・駐豪大使をフランスに引き揚げさせるという、異例の抗議を行った。
22日の電話会談でバイデン大統領は、フランスに対する態度に過ちがあったことを認め、インド太平洋地域におけるフランスの戦略的重要性を再確認するとともに、今後は戦略的な関心事はオープンに協議することを約束した。
これを受けて、マクロン大統領は駐米大使のワシントン帰還を決定。10月には対面で首脳会談することも決まった。要するに、バイデン大統領が「謝った」ことで、なんとかマクロン大統領が機嫌を直したかたちだ。
いずれにせよ、これで駐米大使召還まで悪化していたフランスの米国への怒りは多少は鎮まり、両国は和解の方向に動き出した。両国はNATOの同盟国であり、一時的に喧嘩はしても、結局は同じ陣営の国なのだ。
ただ、潜水艦契約に関しては、フランスにも責任はあった。オーストラリアは2016年に12隻の通常動力型潜水艦の開発・建造協力でフランス企業と契約したが、フランス側の技術不足で計画がどんどん遅延されたことに加え、契約当初は約4兆円だった総額が約7兆円に跳ね上がるなど、先行きが不透明になっていたのだ。
そんななか、オーストラリアと中国の政治的な対立が激化。中国が海上戦力をどんどん強化していることへの対応として、オーストラリアはこの際、通常動力型をやめて新規に8隻の原潜を取得する決断をした。そこでイギリス経由で米国に打診し、秘密裏に交渉を進めて今回の発表となったのである。
国家を挙げてのビッグビジネスを一方的に反故にされたフランスだが、激しい怒りを見せたのは、単にカネの話だけではない。国際的な安全保障の枠組みから、自分たちが排除されたことが大きいと思われる。
今回のAUKUSは新技術開発や経済分野も包括するが、メインは軍事同盟である。もともと英米はNATOで軍事同盟関係にあり、米豪も「ANZUS」(米豪ニュージーランド安全保障条約)で結ばれているが、今回、3か国のさらなる連携が宣言されたわけである。
それが他の同盟国への事前の連絡が一切ないままに突如、発表された。NATO参加国などの同盟国は軽視されたということになる。
(以下略)
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- 2021/09/27(月) 16:35:08|
- FRIDAYデジタル/黒井文太郎・執筆記事
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総裁選で話題の「敵基地攻撃能力」
その有効性をリアル想定で分類してみる〜黒井文太郎レポート2021年09月22日
FRIDAYデジタルhttps://friday.kodansha.co.jp/article/2058669月10日、高市早苗前総務相がテレビ番組で、
「敵基地を一刻も早く無力化した方が勝ちだ。使えるツールは電磁波や衛星ということになる」「強い電磁波などいろいろな方法でまず相手の基地を無力化する。一歩遅れたら日本は悲惨なことになる」
などと語り、注目された。
高市氏は19日の候補者テレビ討論でも「敵基地の無力化」の重要性を指摘し、今度はそのために精密誘導ミサイルの必要性を主張している。
岸田文雄前政調会長も、13日の記者会見で、敵基地攻撃能力保有を「有力な選択肢」と評価した。
他方、河野太郎行政改革相も13日の記者会見で言及。北朝鮮ミサイルを想定した質問に対し
「敵基地攻撃は随分前の議論だ」
と指摘。
17日の記者会見では対中国軍を想定した質問の流れに
「敵基地攻撃能力は昭和の概念。抑止力は日米同盟で高めていく。短絡的な議論は避けるべきだ」
と言及。導入に慎重な姿勢を示した。
「敵基地攻撃」とは、具体的に何なのか自民党総裁選での各候補の安全保障政策に関し、なにやら「敵基地攻撃能力」の是非が論点になってきている。
これは、北朝鮮や中国のミサイルの脅威から日本を守るため、従来のミサイル防衛に加えて、敵の基地を攻撃する兵器を新たに導入・配備しようという議論だ。
日本の次のリーダーを選ぶ重要な自民党総裁選で、各候補の安全保障政策の違いが論点に上がるのは悪くない。テクニカルな分野に踏み入る分野だが、候補者たちにも正面から取り組む姿勢が見えて、それ自体は評価できる。
ただ、こうした質疑の場で、尋ねるメディアも、答える候補者側も、それぞれ想定している敵基地攻撃の状況の認識が統一されていない印象があり、見ていてしばしばチグハグなやり取りになっている。
それでは、せっかくの「議論」も迷走してしまう。敵基地攻撃能力とは具体的にはどういう状況での、どういう目的で、どういうことをやる能力を想定しているのか。リアル想定で分類してみたい。
(以下略)
- 2021/09/27(月) 16:26:13|
- FRIDAYデジタル/黒井文太郎・執筆記事
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妹・金与正が語っていた「新型ミサイル発射」の本当の目的
「挑発ではない!」「党大会決定の活動だ」政治的アピールとは無関係か〜黒井文太郎レポート2021年09月18日
FRIDAYデジタルhttps://friday.kodansha.co.jp/article/205532<北朝鮮が15日、「短距離弾道ミサイル」の発射実験を行った。9月11~12日に行った「長距離巡航ミサイル」の発射実験に続くこの動きに、報道が錯綜している。軍事ジャーナリスト・黒井文太郎が、金正恩、金与正兄妹の「真意」を読み解いた。>
北朝鮮2つのミサイルの特徴は巡航ミサイルはジェット・エンジンで推進するミサイルで、速度は遅いが概して命中精度が優れている。低速なので発見できれば撃ち落とすのは比較的容易だが、通常、きわめて低い高度を進むので、目前に現れるまでレーダーに探知されにくい。
他方、弾道ミサイルはロケット推進で高速で打ち上げられ、その勢いの慣性で飛んで標的を攻撃する。高い高度まで上がるので、遠くからでもレーダーで捕捉・追尾されやすいが、速度が速いので迎撃は困難だ。
日本全土が「射程内」になった11〜12日に北朝鮮が発射した巡航ミサイルは射程1500㎞で、日本全土を狙うことができる。北朝鮮では今年1月の朝鮮労働党大会で、金正恩委員長(現・総書記)がそれまでの党の政治的成果と今後の方針を報告したのだが、軍事分野の言及の中に「中・長距離巡航ミサイルをはじめとする先端核戦術兵器も次々と開発」とあった。つまり彼らは巡航ミサイルを核ミサイルとして開発しているわけで、それが完成すれば、日本は従来の核弾道ミサイルに加えて、さらに核巡航ミサイルにも備えなければならなくなる。
ただし、これを核ミサイルにするには、数百kgレベルまで核爆弾を小型化しなければならず、おそらく北朝鮮はまだそれを実現していない。しかし、核爆弾でない通常爆弾でも、命中精度の高い巡航ミサイルなら、日本の各重要拠点をピンポイントで狙うことができる。1発あたりの威力は大きくないが、数多く使うことで成果が期待できる。
(以下略)
- 2021/09/27(月) 16:22:25|
- FRIDAYデジタル/黒井文太郎・執筆記事
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過激テロ指導者もいる「組閣」でわかったタリバン政府の今後
アフガニスタンで何が起きているのか。黒井文太郎緊急レポート2021年09月10日
FRIDAYデジタルhttps://friday.kodansha.co.jp/article/2042159月7日、タリバンが暫定政権の顔ぶれをようやく発表した。8月15日に首都カブールを制圧してから、すでに3週間以上が経過している。
これまでアフガニスタン情勢に関しては、タリバン新政権が穏健路線をとるのか、あるいは過去のような国内での厳しい弾圧をともなう強圧的な路線をとるのかが、最大の注目点だった。タリバンの対外的な情報発信を担ってきたのは、もともとカタールを拠点に対米交渉を担当してきた政治部門の指導者たちであり、この3週間も、対外的にはずっと穏健路線をアピールしてきた。
しかし、①彼らの言葉は本心なのか否か、あるいは②彼らの言葉はタリバン指導部の総意なのか否か、③彼らの方針にタリバンの末端勢力は従うのか否か、が不明だった。
〝過去のタリバン″ではなく、〝現在のタリバン″の内情については情報がほとんどなかったから、世界中のメディアも、アフガニスタンの今後について、あやふやな「憶測」を報じるしかなかった。
しかし今回のタリバンの「暫定政権の人事発表」によって、〝現在のタリバン″について、いくつか「推測」が可能になった。
タリバン組閣の「意味」を読み解く▽内部で綱引きがある前述したように、新体制の発表まで3週間あまりもかかった。これは、タリバン指導部内で、さまざまな陣営の間で話し合いが長引いたためと推測できる。
タリバンはもともとパシュトゥーン人を中心にした有力な部族指導者・戦闘指揮官の集合体だが、強い指導力・影響力を持つリーダーがいれば、話は基本的には上意下達で早い。しかし、おそらく新政権の統治方針と主導権をめぐって、話し合いがかなり紛糾した可能性がきわめて高い。
(以下略)
- 2021/09/27(月) 16:17:02|
- FRIDAYデジタル/黒井文太郎・執筆記事
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アフガン・カブール空港 70人超を殺害した過激派組織の「正体」
反タリバン過激派組織「ISホラサン州」とは何者か2021年08月27日
FRIDAYデジタルhttps://friday.kodansha.co.jp/article/201729<タリバンによるアフガニスタン全土制圧から2週間。他国へ逃げ出そうとする市民が殺到した空港で、恐れていた事件が起きた。今回の爆弾テロ実行犯はタリバンではない。現地情報が錯綜するなか、テロ組織を長年ウォッチする軍事ジャーナリスト黒井文太郎氏が緊急レポートする。>
8月26日、アフガニスタンのカブール空港の入口付近と近傍のホテルで、爆弾テロが発生。米兵13人を含む70人以上が殺害された。
アフガニスタン情勢をめぐっては、イスラム強硬派「タリバン」が8月15日にカブールを制圧したことから、タリバンがいちやく注目されていたが、じつは、今回の犯行はタリバンではない。
事件後、「ISホラサン州」(ISKPもしくはISIS-K)というイスラム過激派組織が犯行声明の動画を発表した。もともと事件に先立って米英当局などがISホラサン州による空港テロの脅威を指摘していたが、そのとおりになった展開だ。
「ISホラサン州」とは何者か?名前のとおり、自ら「IS(イスラム国)」の「ホラサン州支部」を名乗っているグループで、IS最高指導者に忠誠を誓っている。イラクとシリアでISに勢いがあった頃、ISに共鳴した世界各地のイスラム過激派が、それぞれ自ら「ISの支部」を名乗ったが、そのアフガニスタン=パキスタン版だ。ホラサン州とは古い地域名で、現代のイラン、中央アジア、アフガニスタン、パキスタンの一部にまたがる地域を指す。
(以下略)
- 2021/09/27(月) 16:13:13|
- FRIDAYデジタル/黒井文太郎・執筆記事
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「タリバンは悪玉か、穏健化したか」 世界の見方
~政権崩壊から1週間。アフガニスタンで今、なにが起きているのかー黒井文太郎レポート2021年08月22日
FRIDAYデジタルhttps://friday.kodansha.co.jp/article/200635タリバンは、はたして「怖ろしい集団」なのか。いま、世界が固唾を呑んで注視している。
アフガニスタンで8月15日、イスラム武装勢力「タリバン」が首都カブールを制圧した。以来、米CNNや英BBCなどの海外メディアは連日、アフガニスタン情勢をメインに報道し続けている。今後タリバン新政権が何をやってくるか「まだわからない」からだ。
8月19日、ドイツ国営放送「ドイチェ・ヴェレ」は、同社記者4人のアフガニスタン国内の自宅がタリバン兵士の捜索を受けたと発表した。現在はドイツで活動している記者の家族1名が殺害され、もう1名が重傷を負ったという。同社ディレクターは「アフガニスタン国内でタリバンが組織的にジャーナリストを探していることは明らかだ」としている。
タリバンという武装勢力がやってきたことタリバンは内戦が激しかった1996年に一度、政権を奪取している。多数派部族であるパシュトゥーン人が中心の組織で、イスラム法を規範としたが、実際には古くからの部族の厳しい掟を重視し、それを独自のイスラム法解釈として人々に強要した。そのため、女性の労働や教育、自由な外出を認めないとか、西洋的な娯楽を禁じるとか、四肢切断や石打ち、鞭打ちなどの残酷な刑罰、あるいは公開処刑を導入するといった人権侵害が甚だしかった。
(以下略)
- 2021/09/27(月) 16:09:45|
- FRIDAYデジタル/黒井文太郎・執筆記事
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南ア「暴動」とキューバ「デモ」似て非なるそれぞれの事情
大規模な抗議行動が起きた2つの国で、人々はなにを求めているのか〜黒井文太郎レポート2021年07月18日
FRIDAYデジタルhttps://friday.kodansha.co.jp/article/194041今、2つの国で大規模なデモが起きている。南アフリカとキューバだ。南アでは、暴動に発展して、ショッピングセンターなどでの略奪行為も拡大している。死亡者もでている。
この2か国のデモは、どちらもコロナ禍による経済低迷を背景とした「一般庶民の不満爆発」という共通点はある。が、それ以上に、両国ともに社会の根底に潜んでいた問題が顕在化したという側面を持っている。一見同じに見える「コロナ禍の暴動」だが、その深層は、当然ながらそれぞれに国の事情による。
南アが抱える問題の根底には暴力の蔓延と失業が
南アフリカの状況をみてみよう。
引き金は、6月29日にズマ前大統領に禁固刑が確定し、7月7日に自ら出頭して収監されたことだった。彼は在任中の汚職容疑で調査委員会への出席を求められていたが拒否していたため、法廷侮辱罪での有罪判決だった。
すると、ズマ前大統領の支持者が反発し、抗議デモが発生。それが10日から放火などの破壊行為に発展し、さらにそれに乗じて略奪行為が拡大した。13日までに600以上の店舗で、数十億ランド(1ランド=約7.5円)が略奪されたとみられる。
南ア政府は7月12日、軍の派遣に踏み切ったが、暴動・略奪は一向に収まらない。13日までに死者は72人、逮捕者は1234人となっている。死者の多くは、略奪にともなう争いで亡くなったとみられる。
この暴動の最大の要因は、ズマ前大統領とラマポーザ現大統領の対立だ。
(以下略)
- 2021/09/27(月) 16:02:16|
- FRIDAYデジタル/黒井文太郎・執筆記事
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